大宮公園小動物園

わたしたちにできること

 小高飼育係

2021年9月30日

 以前、タンチョウの上側のくちばしが短くなったことがありました。その朝、給餌と清掃に部屋に入った時には気づかず、昼間園路を歩いている時に柵越しに見て、長さがそろっていないことに気が付きました。動物たちは、突然大きな音がしたり、見たことがないものが現れたりするとビックリして暴れることがあります。壁にぶつかったり、フェンスに引っかかったりすることもあります。この時も、何が起きたかわからなかったので、とりあえず展示場の地面とフェンスを点検しました。いつもと変わったことはなかったものの、くちばしが折れたことは確かです。出血も痛がっている様子もなかったため「様子見」になりました。その後、えさ場の台のすきまや水道周りの金属など怪しそうなところをチェックしました。餌の魚を食べやすいように小さく切り、ペレットも取りやすいように入れ物を深い物に変えました。食べ方も食べる量も変わりないように見えたのでそのまま様子を見ました。

 1か月後にはほぼ元通りになっていました。鳥類のくちばしは伸びますが、使うことで自然に削れているようならばそのままでかまいません。しかし、伸びる速度が速い時は調整する必要があります。今までタンチョウはそのようなことはありませんでした。今回、何かがきっかけで短くなってしまったくちばしですが、自力で元に戻せる範囲内だったようです。(もっと長く折っていたら元通りにはならなかったでしょう)くちばしの長さが戻ったところで、餌も元に戻しました。原因が確定できないので不安は残りますが、自分の力で治せることが分かったことはこれからの安心材料です。

上のくちばしがかけています
上下のそろったくちばし

 小獣舎の動物たちは夜間寝室に収容しています。寝室と展示場の間の扉は低い位置にあり、舎内の通路側ののぞき窓からは動物の出入りが上手く観察できません。(私の背が低いので)そのため、動物の様子を見るには園路側に出る必要があります。展示場に出してすぐは、餌を食べているので少し時間を置きます。でも、置きすぎると休息に入ってしまうことも。それで発見が遅れました。ニホンアナグマ「いのすけ」の首の後ろに脱毛が…。展示場内を見回しましたが、動き回っただけで自然にこすれるようなところはありません。自分では届かないでしょう。何かトラブルがあって、自分でどこかにこすりつけた?ではその原因は?よく観察しても肌に問題があるようには見えませんでした。よってこれも「様子見」です。

 急に涼しくなった頃から全身がフカフカし始め、いつの間にかきれいな「いのすけ」に戻っていました。今年は夏毛への換毛がゆっくり長く続き、これぞ夏毛という姿になりませんでした。そのあたりの事も影響しているのでしょうか。ニホンアナグマは地域によって冬眠する動物です。冬に備えて食欲が上がるのでそれに合わせて給餌量も変化させます。冬に向けての換毛も始まります。今回はそのタイミングが上手くいったように思いました。

首の後ろに楕円形の脱毛が
いつの間にかフカフカいのすけに

 さて、問題は歯です。カピバラは一生歯が伸び続ける動物です。そのため、常に正しい長さの歯の状態を保たなければなりません。カピバラが「歯磨き」と呼ばれる行動をすることをご存じの方は多いと思います。ご多分に漏れず、当園の「ピース」も石を使って毎日熱心に歯磨きします。他の個体は行わないのに、小さいころからできました。おかげで(本当か?)大変良い歯を保っています。良い歯のバッヂをあげても良いくらいです。メスの「ラ・メール」は石を使った歯磨きをしません。だからと言って、木を齧ったりしているわけでもありません。(たまにはやります)それでも最近まではきれいな歯並びをしていました。それが気が付いたらこんなことに!とりあえず、斜めながらも上と下はかみ合っているので使用には支障はないようで、食べ方やスピードに変化は見られません。カピバラの歯は、折れても短時間で伸びることはわかっています。けれども、人が手をかけてしまうと、自然に元に戻るのはたいへんなことで、常に手入れが必要になってしまう例が多くあるようです。それを考えると、「ラ・メール」に何ができるかは微妙なところです。今のところこれも「様子見」です。

良い歯の見本はピース
みごとに斜めに噛み合ったラ・メール

 野生の動物たちはヒトの手にかかることを好みません。治療するために保定することは、動物にとっては苦痛でしかないでしょう。ですから私たちは、動物たちがケガや病気をしないように餌や展示場に気を使います。また、万が一に備えて診察や投薬ができるように馴致を施します。それでも事故が起きたり病気なった時は嫌われるのを覚悟して治療に当たります。それが動物たちにとって最良であることを信じて。

 園内にはいろいろな注意ラベルが設置してあります。「走らないで」「えさをあげないで」「ストロボ禁止」等々。せっかくの楽しい気持ちを害しているようで心苦しいのですが、動物たちの安心安全のくらしを守るため「来園してくださる皆様にできること」にどうぞご協力をお願いします。

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〒330-0803 
さいたま市大宮区高鼻町4

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電話:048-641-6391(大宮公園事務所)

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