入選作品をご紹介します。(敬称略)

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「古墳満開」

渡辺 邦典

さきたま古墳公園
(行田市)
 

 

審査員講評

 

画面いっぱいに広がる青い空に、枝を広げた桜の花の美しいこと、浮世絵の中に出てきそうな雰囲気ですね。その奥に一列に並ぶ桜の木々、そしてそのまた奥に、春の緑におおわれたさきたま古墳の山頂に咲き誇る桜。古墳が作られた6世紀前半に思いを馳せながら、画面の中を歩き回ってお花見見物ができそうです。空間の広がりの中に様々な桜の表情をうまく捉えた味わい深い作品です。



 
「おとぎの国」

田中 勝秋

 

川口グリーンセンター

(川口市)
 

 

審査員講評

 

 まわりの草花の大きさから見ると、このお城は本当に小さなものなのでしょう。広い公園のなかで見過ごしてしまいそうな片隅にも、ファインダーを通してみれば、もうひとつの別世界が広がっています。桜の枝を効果的に配して、おとぎの国の入り口を飾っているのもいいですね。写真は在るものを写すだけではなく、切り取り方によってもうひとつの世界を生み出すこともできます。


 

 

「秋空のコンチェルト」

福島 一生

秩父ミューズパーク

(秩父市)

 

審査員講評

 

シンメトリーの構成にしないで、手前左側の枝が画面いっぱいに伸びているアングルが、平凡になりやすい写真に変化を与え、動きのある楽しい画面構成になっています。まさに、イチョウの木々たちが織りなす、秋空のコンチェルト。タイトルがいきています


 


「朝日を浴びて」

根岸 実

鶴ヶ島市運動公園

(鶴ヶ島市)
 

 

審査員講評

 

花冷えのする朝でしょうか。皆、肩を丸くして、同じように釣り糸をたれています。朝早くから満開の桜に囲まれ、風もなく鏡のように静まり返った水面をながめながら朝の静かなひと時をすごす。最高の公園での過ごし方ですね。釣り人たちがシルエットになって、日なたの桜、水面の桜、日陰の桜と色を変え、静かに時間が流れている様子が伝わってきます。もう少しすると、釣り人たちの背中にも陽があたってくるのでしょう。絞りを気持ち明るめにすると、釣り人たちの背中に少し陽が当たっている様子ももう少しはっきりと写し出され明るい雰囲気になり、もっと良かったかも知れません。

                         

 


 「晩秋 新都心遠望」

 

大橋 常雄

 

大宮第二公園

(さいたま市)

 

審査員講評

 

 

デジタル写真ならではの作品。雲と新都心の建物を出すために焼きこんで?写真に手を加え調整をしてあるので審査のとき少し問題になったのですが、あえてそれを狙っての作品と解釈。公園から、新都心を望むという視点が今までにない写真だったので、入賞になりました。画面の中心を弧を描いて流れる川、空の中に垂直に浮かび上がっている新都心のビル、人の姿もなく静まりかえった公園は、どこか近未来的な不思議な雰囲気が漂っています。


 

 


 「展望」

 

 木島 厚

 

さきたま古墳公園

(行田市)

 

審査員講評

 

 

桜の枝に囲まれた空間の中に、さきたま古墳とその頂上の桜をはめ込んだ作品。空間の形が、どこかハート型のように見えるのがなんとも楽しい。桜の花に囲まれた空の青、満開の桜の木、菜の花の黄色、若草の緑が呼応しあい、春の生命力あふれる息吹を感じさせます。タイトルが少々味気なくもう一工夫あると、見る側の写真の印象も変わるのでは……?


 

 

 

「秋うらら」

 
齋田 和博
 

 

大宮公園

(さいたま市)

 

審査員講評

 

 

蒼いシャドウ部をバックに、逆行の光をうまく捉えた情感ある作品。何もかもが逆行の光を受け輪郭が浮き出て輝き、秋の日の美しさを感じます。ベンチでお日様の光を身体いっぱいに受けくつろいでいる人、銀色の輝く水面でのんびりと羽を休めている水鳥のシルエット、陽の光に透け紅葉した葉、おだやかな陽の暖かさが伝わってきます。


 

 

「散歩道」

 

押川 陽一 

 

川越公園

(川越市)
 

 

審査員講評

 

美しい弧をいくつも描いた道が画面の奥まで続き、その両わきに立ち並ぶ木々のシンプルな構成の作品。応募の写真は、コントラストがすこし弱く露出が少しオーバー気味でしたが、デジタル写真の場合は、プリントの際、コントラスト、明暗を調整できます。フレームワークはとてもいいので、写真を撮るときの絞り値や、写真を仕上げるときの明暗、コントラストなどを意識して、自分の感じた印象により近づくように作品作りをしていくと何倍も作品が良くなると思います。

 


 

 

 

「青空に向ってキック!!」

 

沖舘 宏 

 

武蔵丘陵森林公園

(滑川町)

 

審査員講評

 

 

モリ森ボールの写真は、今回、はじめての作品。ピンクとブルーの大きなボールを、ボールと同じ色の服を着た子供が追いかけて蹴ろうとしているシーンは、ボールが止まっているので時間が止まったような、ちょっと不思議な雰囲気のある作品。子供の顔がもう少し見えると、もっと生き生きとした元気な写真になったと思います。撮り位置を変え、対象にもっと迫ったりして撮ってみると、意外と面白い作品が撮れるかもしれません。

 

                         

 

 

 

「春うらら」

 

薮内 邦夫 

 

武蔵丘陵森林公園
(滑川町)

 

審査員講評

 

 

ユキヤナギと桜の花が画面いっぱいに広がり、春の光であふれているような優しい作品。ユキヤナギの動きのある枝の形が、春の柔らかな雰囲気を盛り上げています。ただ桜の下でお花見している人が、ワイドレンズを使用しているせいで極端に小さく写っています。もう少し普通の感じで見える球の長さでも、一度覗いてみてください。


 

 

 

「春のもてなし」

 

大胡 康夫

  

羊山公園

(秩父市

 

審査員講評

 

 

画面を半分に割り、空の青と木々の緑、そして芝桜のピンクで覆われた力強い作品。空と芝桜の色が強烈に呼応しあい、生命力ある春のエネルギーがあふれています。


 

 

 

「癒しのスポット」

 

内田 邦博  

 

秋ヶ瀬公園

(さいたま市

 

審査員講評

 

 

あたり一面緑の世界・・・樹齢何年位の木でしょうか。斜めにさした光が新緑の若葉を照らし、美しいです。身近な公園の中に、こんな森林浴ができそうな場所があるなんて、樹間を通り過ぎる風も気持ちよさそう。タイトルどおり、癒しのスポットですね。


 

 

 

「誰か来ないかな」


小谷野 時行

 

川越公園

(川越市)
 

 

審査員講評

 

 

かわいらしいタイトルがついた一人ぼっちの雪だるま。何日か前に子供たちがワイワイ言って作ったのでしょう。毎日少しずつ溶け出して、顔の表情を変えていく雪だるま。まだ誰もいない朝の公園でしょうか。雪だるまはちょっぴり寂しそうです。タイトルと写真がコラボして、見る人の心に雪だるまのお話しが色々イメージされると思います。タイトルは、やっぱり大事ですね。


 

 

 

「音楽と水のハーモニー」

 

齋藤 茂

 

北浦和公園

(さいたま市)

 

審査員講評

 

 

空に向かって勢いよく水しぶきを上げている様々な水の動きと虹が絡み合った光景は、清々しく、エネルギーが溢れだしている感じがします。水の音が音楽となって聞こえてきそうです。右側手前のフェンスを切った方が、画面が整理されもっと良い作品になったと思います。


 

 

 

「夕暮れに映える」

 

榎本 喜夫  

 

武蔵丘陵森林公園

(滑川町)

 

審査員講評

 

 

紅葉した木々がライトアップされ、アートイルミネーションで飾られた道の公園は、昼とは打って変わった幻想的な世界に変身。自然光とライトの光源に映しだされたカラフルな色の葉が重なりあい、摩訶不思議なこと。

 


 

 

 

「new face」

 

荒井 典子

 

こども動物自然公園

(東松山市)

 

 

審査員講評

 

 

長野県の水族館から譲り受けた3つの卵のうち、人工孵化で唯一元気に成長したペンギンのペンペン君。人にも慣れているのでしょうね。カメラの前で、バッチリとポーズを決め、ナイスショット!ペンギンの目や顔、斑点のある胴、足のまだら模様、じっくり楽しませていただきました。


 

 

 

「燃える下池」

 

田原 敬三

 

彩の森入間公園

(入間市)

 

審査員講評

 

 

見事な夕暮れが映りこんだ池の作品ですが、鏡のような水面に映り込んだ風景なので、ちょっとわかりにくいです。一目でそれが水面とわかるように、波紋をつくり、揺れた夕暮の風景の方が、もっと情感が出て良い作品になったかもしれません。


 

 

 

「花の影絵」

 

関矢 俊夫 

 

武蔵丘陵森林公園

(滑川町)

 

審査員講評

 

 

見事なムスカリの花の小道に、満開の紫の花をつけた大きな木の影。まちがって、小鳥が枝にとまってくるかもしれませんね。見る視点に遊び心があり、とても楽しい作品です。


 

 

 

「わーこわいー!!」

 

若林 袈裟光  

 

所沢航空記念公園

(所沢市)

 

審査員講評

 

 

ターザンロープにしがみつき目を閉じ悲鳴をあげている女の子の表情が、なんともいえず可愛らしい。流し撮りをして、スピード感も良く出ています。画面からキャーと言う声が飛び出してきそうです。

 

 


 

 

「明日を見守る翼」

 

伊藤 勉 

 

所沢航空記念公園

(所沢市)

 

審査員講評

 

 

2011年の年は、東日本大震災という想像を絶する大きな災害が起きました。1日も早く被害にあわれた方が、おだやかな安心できる生活ができるよう願っています。そんな気持ちを込めて、オレンジ色の夕日に染まった公園の大きな木の下で、お母さんと子供たちが幸せそうに遊んでいる「明日を見守る翼」の作品を選びました。メッセージのあるとても素敵な作品です。明日も、そしてそのまた明日も‥‥‥と、子供たちが安全で安心して幸せな環境の中で暮らすことができる世の中になってほしいと思います。作者の伊藤さんも、そんな思いを込めてこの写真を撮られ、タイトルをつけたのではないでしょうか。

 

 今回は、10歳から87歳までという幅広い年齢層の方から、390点の応募がありました。ほとんどの方がデジタルカメラでの撮影で、ごくわずかの人がフィルム撮影での応募でした。内容は、夏の写真が非常に少なく、子供たちや、人々の公園で過ごしている人物の写真も少なかったです。次回の応募には、風景はもちろんですが、人々が公園で過ごしている楽しそうな作品を大いに期待しています。

 また過去の方の入賞作品と似ている作品も多くありましたので、ぜひ、自分の目で見つけて撮った素敵な作品作りをしてください。

 最近はデジタルカメラの普及に伴い、プリントも自分で仕上げることが多くなっています。デジタルの場合は、撮影後、明暗、コントラストなど調整がソフトを使用して簡単にできますから、仕上げのプリントも良い作品を作るうえで重要です。ただ、あまり写真をいじりすぎると不自然な別のものになってしまうので、やり過ぎないよう注意して下さい。また、デジタルはフィルムでの撮影とはちがい、何枚でも取り直しが出来ます。雑にシャッターを切らないよう、一枚一枚、丁寧に撮りましょう。

 そしてレンズですが、かなりのワイドレンズで風景を撮っている方も多く、パースペクティブの効いたドラマティックな写真になりますが、不動産屋さんの写真と同じで、写真で見るととても広く見える部屋が、実際に行ってみると小さな部屋だったということがよくあります。ワイドレンズを使うときは、その点を意識して、目的を持ってレンズの球の長さをえらびましょう。

 最後に、今回入賞されなかった作品のなかに、前回入賞された方の大変すばらしい写真がありましたが、続けての入賞は控えさせていただきました。ただし前回よりも上の賞をお取りになった場合は、入賞とさせていただきます。 



横山 正美 (写真家)

日本航空国際線客室乗務員として7年間勤務、1980年退社。以後フリーランスとしてコマーシャル、雑誌、ドキュメンタリーの分野などで幅広く活躍。1988年NHK教育テレビ「日曜美術館」の1年間の司会やリポーターな ども。2004年、東京から逗子に移り、作家活動。個展多数。最新刊、2009年7月に幻冬舍より、空の写真詩集、『僕の空、ルシエール』出版。

 主な写真集に、尾崎豊『午前0時の十字架』(幻冬舎)、『B-1ザウルスの盃』(夢枕獏共著/世界文化社)、『人魚のゆくえ』(新潮社)、『猫になりたい』(新潮社)など。谷崎水紀のペンネームで、エッセイや写真詩集『ジャンとナナ』『麗しのマイ』(幻冬舎)など。