大宮公園小動物園

アナホリフクロウの繁殖2023

豊田飼育係

2023年8月15日

高校野球、セミの大合唱、夏休み中の子どもたち楽しそうな声…夏真っ盛りですね!当園周辺では、毎日茹だるような暑さが続いています。毎年のことですし、できる限りの対策をしているとはいえ、こう暑さが続くと動物たちが体調を崩してしまうのではないかと心配な日々が続きます。

さて、今回はアナホリフクロウの繁殖について。2021年の初繁殖に続き、今年、2回目となる繁殖に成功しました。

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アナホリフクロウの面白い生態

アナホリフクロウの新しい試み

過去の記事にも書いてありますが、アナホリフクロウはその名の通り、地面に掘られた巣穴で繁殖するとても珍しいフクロウです。野生では、プレーリードッグなど他の動物が掘った巣穴を利用することが多いとされていますが、もちろん自ら地面を掘ることもできます。昨年はペアが自らトンネルを掘り、産卵まで確認できましたが、残念ながら孵化には至りませんでした。飼育ケージのような限られたスペースで掘った巣穴では、すぐに崩れてしまうこともありますし、そもそも雛を育てるための適切な環境条件(温度、湿度、空間)を満たさない可能性もあります。そのため、飼育下では繁殖を手助けする手段として、崩れる危険のない人工的な巣穴を予め設置したり、産卵後に卵を回収し、人の手で雛を育てたり(人工孵化・育雛)することもあります。ただ、折角、アナホリフクロウのペアが、彼らの本来持っている能力を活用して繁殖に取り組もうとしている現状があるのであれば、それを最大限に発揮してもらいたいと思い、今期はあくまで彼らをサポートすることだけを意識して飼育管理に取り組みました。

年始あたりから、早速、穴掘りが始まりました。土のトンネルが乾燥して崩壊しないよう、適度に水を撒いたり、土を追加したりしながら様子をみます。今期は飼育ケージ内壁のコンクリート基礎に沿ってドンドン掘り進めていきました。また新たに設置した水皿用の土台もトンネルの崩壊を防ぐのに一役買っていたようです。

オレンジの線のように巣穴ができていました

3月に入り、それまで枝に並んで止まっていることが多かったペアですが、雌が日中、姿をほとんど見せず、巣穴の中に籠ることが多くなってきました。たまに巣穴から出てきている雌を観てみると…腹部の羽根がなく皮膚が露出しています!これは「抱卵斑」といって産卵し卵を抱いている雌にみられる特徴です。

雌(左)の腹部にある抱卵斑

「これは卵を産んだかもしれない!」と思い、雌が巣穴から出てきているタイミングを見計らって、穴の中の写真を撮ってみると…白い塊が2個みえます。間違いなく卵です!昨年よりも1ヶ月半ほど早い産卵でした。巣内の状況も程よく湿っていて崩壊する危険もなさそうです。その後も雌は巣内に籠っていることが多く、しっかりと卵を抱いているのだろうと、安心して見守り続けました。

巣穴の中の卵

卵を確認してから約3週間後の49日、巣の入口に割れた卵を確認しました。母鳥の抱卵がうまくいかなかった場合、破卵といって卵にヒビが入ったり、粉々に割れてしまうことがあります。が、この卵はきれいに2つに分かれるように割れています。これは雛が孵化した後に観られる卵の形状です。

孵化後の割れた卵

「いよいよ雛が孵ったかもしれない!」と、再び雌が巣穴から出ているタイミングで巣内を覗くと…ふわふわの綿羽に覆われた雛がいました!ついに念願だった、フクロウたちが自ら掘った穴での繁殖成功の瞬間です。でも、まだ安心ができません。雛は巣穴の奥の方にいるため、元気かどうか日々の様子を観察することはできません。無理をして人が巣穴を頻繁に覗くと、親鳥が警戒し子育てをやめてしまうこともあります。雛が無事に成長するかどうかは完全に親鳥に任せることになります。巣内を覗きたい気持ちを必死に抑えて、親鳥たちが安心して子育てできるよう、雛が食べやすいであろう餌を与えたり、引き続き巣穴が崩壊しないよう水まきをしながら、見守り続けました。また、巣穴の近くに無人で撮影できるセンサーカメラを設置して、人が近づかなくても様子が確認できるような工夫もしました。

巣穴の中の雛。わかりにくいですが2羽います!

そして孵化を確認してから約20日後、大きくなった雛が巣穴の入り口付近まで出てきているのを確認しました。所々に綿羽が残っていますが、顔つきはもう立派なフクロウです。その後も雛たちはスクスクと成長し、数日のうちに自力で巣穴から出てくるようになりました。孵化後2ヵ月程経つと自由に飛ぶことができるようになり、餌も親鳥の助けを借りることなく食べられるようになりました。巣穴に入ることも、もうほとんどありません。ここまで立派な若鳥に成長すればもう大丈夫です。巣立ちということで、現在、若鳥2羽は親鳥と違うケージで仲良く過ごしています。

巣穴入口付近の雛
綿羽はまだ少し残っています

動物たちは種によってそれぞれ長い時間をかけて生き残るために獲得してきた素晴らしい能力を持っています。その動物が本来持っている能力を少しでも発揮できるような環境を整えてあげること、そして動物園という限られた環境の中で動物たちがそれに応えてくれた時、一番近くでその能力を観察し続けられること、これが動物園で働く私たちにとっての醍醐味の一つです。

 

追伸、最近、若鳥たちが巣穴を掘り始めました。いつの日か若鳥たちが他の個体とつがいになり、この「穴を掘って子育てをするフクロウ」という素晴らしい種の特性で来園者を魅了しつつ、世代を越えて命を繋いでくれることを期待しています。

無事に育った若鳥2羽
若鳥たちが掘った巣穴

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