報告
(2020年10月30日)
 
  20063月にメスのミーシャとともに大宮公園小動物園にやってきたオスのドンが2020917日、死亡いたしました。166か月令でした。今年の1月にメスのミーシャも168か月令で死亡しており、これでアムールヤマネコの展示は終了しました。

 昨年の11月に一度後躯のマヒがあり、回復してからも後肢に力が入らなかったりしていました。動きもゆっくり慎重になりました。その後、展示場や寝室内の寝箱や木の枝などの内装を、あまり高低差のない生活になるよう変えました。展示場の棚の1番上の段から園路を見下ろすことの好きだったドンにしてみればこんなこともストレスになってしまったかもしれません。また、好んで寝ていた場所に砂場を作ったり(結構お気に入りになった)、段ボール箱を置いたり(ネコは箱があると入らずにはいられないを証明しました)、寝箱用の箱にスロープをつけたり(中ではなく上でくつろぐので)しました。夕方の給餌の時以外は展示場と寝室を自由に行き来できるようにし、寝室にはヒーターを設置しました。どのくらい役に立ったのかはわかりませんが、8月中旬までは安定した日々でした。だんだん残餌が目立つようになり、9月に入ってからは投薬も難しくなりましたが、血尿もあったので、薬を市販のペースト状のネコのおやつに混ぜ強制投与も行いました。しかし、17日の朝、展示場のわずかな段差で体を動かせなくなっていたので、管理室の入院ケージに収容しましたが、回復することなくそのまま息を引き取りました。

 檻の外からターゲットを使ってドンを移動させ、体重計に乗せるトレーニングをしていたので、体重は計ることはできましたが、それ以上は近寄ることを許可してくれませんでした。最後まで野生ネコらしい態度で人と接することを望んでいたと思います。

 解剖所見です。栄養状態は悪くなく、歯牙疾患も歯周疾患もありませんでした。胃内に毛球はなく尿石もありませんでした。死因は膀胱移行上皮癌でした。

予防できたとは思いません。十分長く生きてくれました。ミーシャとの間で遺伝子も残しています。多くの事を学ばせてくれたドン。ありがとう。そして、永らく見守り続けてくださった皆様、ありがとうございました。

以下写真の解説です。

・リンゴ箱(114日撮) 
棚の中段に置いた段ボール箱に入るのがマイブームになっていました。 後に床においてもはいっていました。

・草で遊ぶ(625日撮) 
風で動く葉にずいぶんと興味を示しました。

・座る(83日撮)
グルーミングが上手くできなくなり毛玉ができるように。


・顔(824日撮)

血尿があり投薬が始まりました。やや元気がありませんが、目やにも鼻水もよだれもなく肉も噛み千切っていました。

・うなる(97日撮)
きれいな歯が確認できます。レンズは嫌い。 ほとんどの写真は目をそらしています。

・見上げる顔(911日撮)
展示場の寝箱の中で横たわって一日を過ごしていました。 目には力があります。この日まで採食がありました。

(小高)



 ミーシャに学ぶ
(2020年1月15日)
  
   


             (若かりし頃のミーシャ)
   1月12日の朝、前日より寝室に収容し治療を開始したばかりのミーシャが死亡しました。16歳8か月でした。野生種のネコとしてはなかなかの高齢でした。アムールヤマネコはベンガルヤマネコという種の中で北方に生息する地域亜種の名前です。小動物園では南方に生息するベンガルヤマネコと並べて皆さんに見ていただいています。日本国内では両方を同時に見られるのはここだけです。ベンガルはメス、アムールはオスの2頭になってしまいました。どちらも後期高齢者ならぬ後期高齢猫です。住むところの違いにより暑さに弱かったり、寒さが苦手だったりしますが、できるだけ快適に過ごして、少しでも長生きをしてもらいたいと願っています。

 

(小高)


  ネコの気持ち
(2019年6月14日)
       
 しばらく前まで、昼間は全く動こうとせず、寝室の中の暖かい棚の一角でずっと寝てばかりいたミーシャ。高齢のため体の自由が利かなくなり、グルーミングが十分でなく、あちこちに毛玉ができています。イエネコのようにブラシをかけるわけにはいきません。食欲が衰えていないので、餌の肉に様々なサプリメントを添加して食べてもらってはいますが、なかなか若いころのようにはいきません。それでも、少しづつは換毛しているようで、たまに大きな毛玉が落ちていたりしてちょっとだけほっとします。夜の間も展示場と寝室の間の扉を開けておくと展示場に便があるので、動き回っていることはわかっていましたが、見ることはできませんでした。ところがある日、今度は展示場に出っぱなしになりました。以前から置いてあった砂場がお昼寝の場所です。餌は夕方寝室の中に置きます。用意が終わって部屋の扉が閉まると、寝室にこともなげに入って今までどおりあっという間に平らげます。そしてすぐにまた砂場に戻っていきます。高い所の餌は取れなくなっているので、運動能力も低下してきているようです。目もかなり悪くなっているようです。この辺の変化が、行動の変化に繋がっているのでしょうか?ネコの気持ちはなかなかわかりません。

(小高)



  広くなりました
(2016年4月15日)
 
  

小獣舎は8部屋に分かれていて、それぞれが放飼場と寝室に分かれています。アカハナグマのように天井まで使える動物にとってはそれなりの運動をすることはできますが、ネコにとっては少々手狭です。そこで、アムールヤマネコの2つの部屋の放飼場を1つにしてみました。どうしたかと言うと、排水用の隙間をネコがくぐれる大きさにコンクリートを削ってみました。園路から見ると手前に穴があって2つの放飼場を行き来できます。オスとメスなので一緒に出すことは難しいので変わりばんこですが、今までとは違う広い所で動き回るネコが見られるようになりました。そろそろ毛替わりも終わり、スマートになったドンとミーシャを楽しんでください。


(小)




  塗装工事開始
(2015年2月27日)
 
      

小獣舎の塗装工事に伴い、すべての動物を移動させられる施設がないので、アムールヤマネコの2頭だけ暖房設備を設置した検疫舎に引っ越しました。検疫舎は周りを断熱材で囲い、ヒーターとライトで保温。また、寝室用の箱と休息用の台を設置しました。どちらの個体も移動してすぐにこちらの思惑通りに高い所に作った休息台に乗り、私たちをにらみつけてきました。環境が変わっても、いつも通りに餌も食べています。

小獣舎の場合は寝室と放飼場が別ですから、掃除の時、どちらかに収容してから水洗いをします。でも今回は仕切りがないので、扉の柵の間からホースを入れて掃除をすることにしました。ところがホースを柵の隙間から中に入れて蛇口をひねりに行っている間にホースを奥まで引きずり込まれ、かじられてしまいました。何事にも慎重で、新しいものは好まないと思っていたのが大失敗のもとです。あわてて、反対側から引っ張りホースは無事回収できました。道具で遊んでいるところを見たことがなかったのでびっくりしましたが、やっぱりネコかもと思った一幕でした。

きれいになった部屋に、何か置いてみたくなりました。


(小)




 不審な動き
(2014年4月30日)
 
    

月曜日。数少ない4月の休園日に、園内に工事用の車両を入れて工事が行われました。工事はツル舎のタンチョウのペアのいる所なので、カピバラ舎よりです。しかし、園路を通る車と工事用の道具の出す音で警戒モード全開のミーシャです。放飼場への扉は開いているのに出て行かず、わざわざ寝室の窓からの覗き見。換毛もほとんど終わりすっきりした体で超緊張のひとときです。

 工事は一日中続き、そのうち慣れたのか、飽きたのか普通になったミーシャでした。


(小)



この秋の災難
(2013年10月15日)

  


ネコたちの暮らす小獣舎は建てられてから20年以上たちます。あちこちに不具合が生じていたところ、先月から今月にかけて修繕が行われました。

主なところは扉だったので、動物は放飼場にいるか(これはいつもと同じ)、昼間だけど寝室にいるか(運動ができません。ごめんね。)です。でも、部屋と放飼場の境の仕切り扉の工事だったアムールヤマネコのオスのドンは気が気ではありませんでした。作業は寝室内から行われるので、放飼場に出されたうえ、扉をはずした時の代わりの扉は見慣れない板です。その上、扉の隙間からは溶接の火花が…。ドンは一日中、高い所から扉付近を睨んでいました。そして、この夜は部屋には戻りませんでした。

翌日からはいつも通りになりましたが、この10月も中旬になって、暑い日が続きました。何と今度は、水浴びです。夏の暑い時、コンテナプールに浸かる姿はよく見られますが、10月の水浴びは初めて。気持ちはわかりますけどね。

工事の時はなるべくストレスがかからないよう工夫します。でも、自然はコントロールできません。ですから、この季節の変化に負けない丈夫な体を維持できるよう工夫したいと思います。


(小)




衣替え
(2013年4月26日)

  


4月のある日、突然小顔になったミーシャ。担当もびっくりです。


ネコですから、暖かくなり始めると冬毛から夏毛へと換毛します。体をなめて毎日少しづつ変わっていくので、昨年はこんなにはっきり変わったのに気が付きませんでした。今年は、お腹の中に毛玉がたまらないように薬を使ってみようということになり、最近抜け始めたみたい、と話したその2日後、この小顔でした。

先のとがった草を食べて毛玉を吐き出すのはたまに見ていました。どちらかと言うと、オスは時々特大毛玉を吐き、メスはしばしば草まじりの少量の毛を吐いていたように思います。今回良いタイミングで観察ができ、メスの特大毛玉も発見しました。

個体によって、毛玉の吐き方はいろいろだそうです。吐かないで便として排出してしまう個体もいるようなので、ミーシャもそうだったのかもしれません。

ともかく、着々と暖かい季節に向かって準備は進んでいるようで一安心です。


(小)




水風呂
(2012年8月31日)

   

 
この風景を実際に見るまでは、とても信じられませんでした。ネコがプールに浸るなんて!!

前任者から話には聞いていたし、川で魚を捕るネコだと本には書いてありますが、ネコが水をいやがらないなんて。トラが水に親しむのは良く知られていますが、中型のネコはあまりやりません。ここでも、ベンガルヤマネコはやりませんから放飼場にプールはありません。
初めて見たときは何故かドキドキしてしまいました。確かに7月の暑い日でした。でもネコですからねぇ。他の飼育係も目にしたことはあったようですが、なかなか写真に撮れませんでした。
今回は余りの暑さで気がゆるんでいたのかもしれません。丁度リラックスした時で、しかもむこう向きだったので気づかれなかったようです。しばらく浸ってからゆっくり出ていきました。ブルブルもせずに!


(小)




引っ越し
(2011年12月30日)



しばらく前の話題になりますが、11月にアムールヤマネコの2頭が長野県の飯田市立動物園に引っ越しをしました。

彼らは大宮公園で2007年に誕生し、みなさんに愛されてきましたが、当園では非公開の飼育施設がなく、展示外の飼育ができないために引っ越し先を探していました。1種の動物に展示スペースを多くを確保しておくわけにもいかないのです。
動物園では動物を飼育する際、何の目的で、飼育、展示するかを考えています。繁殖させて個体数を増やすため、希少動物の保護に関わるため、動物にまつわる自然環境について伝えるためなど、目的は様々です。
私たちは「かわいいね」「楽しいね」という理由だけで動物を飼育していてはいけないと考えています。野生の動物であれば広い自然の中で、命を懸けて一生懸命生きています。動物園で生活している動物たちは、そんな彼らのPRをしてくれる存在であるべきだと思っています。

ちょっと難しいかもしれませんが、動物園に訪れた際には、なぜ彼らがここで飼育されているのだろうと理由を考えたり話し合ったりしてほしいと思っています。私たちも、もっと上手に伝えられるように努力したいと思います。

引っ越していった2頭にも長野県でみなさんにいろいろ考えてもらえる存在であってほしいと思っています。


(藤嶋)




胴長短足
(2010年2月23日)

  


アムールヤマネコの展示の前では、よくこんな会話を耳にします。
「かわいいネコだねぇ。その辺にいるネコと同じじゃない?」

彼らは確かにイエネコによく似ています。
ですから私たちが、彼らの話をするときには、しばしば違いについて話題にします。
その1つが「胴長短足」という特徴です。
しかし、丸くなって座っていることの多いので、なかなかお見せできません。

ですが最近、隣の部屋のアムールヤマネコを気にしてオスがよく動いています。
のぞき込んだり、飛び上がったりしているので、もしかしたら写真に撮って残せるかもしれないと思いカメラを構えたのが、真ん中の写真です。
胴体がとても長いのがおわかりいただけるでしょうか?
動物たちは、私たちの思い通りには動いてくれません。ですが、時折見せてくれるそんな姿を見ると、とても楽しくなります。
動物園に来ると、たくさんの動物を見たくなってしまうのですが、たまには1カ所でゆっくり動物を観察してみるのもいいものですよ。

ちなみに残りの2枚の写真もヤマネコの特徴が写っています。
1つは耳の後ろ側にある白い模様「虎耳班(こじはん)」です。イエネコにはありません。
もう1つは太い尾です。
こんな特徴もぜひチェックしてください。


(藤嶋)




ハネコじゃらし
(2009年10月17日)

  

みなさんは「ネコじゃらし」はご存知でしょうか?
ペットショップなどに行くと、ネズミの形をしていたり、カラフルでかわいらしいネコじゃらしがたくさんありますよね。

ネコが小動物などの獲物を追いかける習性をいかした、ネコじゃらしは当園のヤマネコたちにとってもいい遊び道具になるだろうなと以前から考えていました。
しかし、彼らは飼育されてはいても野生の習性を失っていないヤマネコです。
とても神経質で担当者でも近づこうものなら牙をむいて威嚇してきます。
市販の製品では万がいち、ひもからはずれてくわえてしまっても取り返すことは困難です。
飲み込んでしまって捕獲なんてことになったら一大事。素材などはよく考えなければいけません。

そこでふと思いついたのが、鳥の羽根でした。
当園には毎年決まってきれいな羽根を落としてくれる鳥がいました。
そう、インドクジャクです。

さっそく取っておいた羽根を用意して、裏の管理通路からヤマネコたちの運動場に差し出してみました。
しかしこちらの目線が気になるのか近づいてきません。
仕方ないので姿勢を低くして僕の体が見えないようにしてちょっとだけ動かしていると、近づいてきた気配がします。警戒されないようにカメラだけを持ち上げて撮れた写真がこれでした。

いつも遊んであげるわけにもいかないので、運動場の木にさしてみたり、ひもでぶら下げてみたりと、現在もいろいろ考えながらおこなっています。
ヤマネコ舎に羽根があったらそーっと観察してみてください。


(藤嶋)

 


サカナとり
(2008年8月18日)


 

以前予告した、魚を獲らせる計画の続きです。

今回は金魚が手に入ったので、朝一番に水浴び場へ入れました。
しばらく観察していたのですが、まったく興味を示さず。。。
気がついていないかのようでした。

僕も仕事があったため、ちょっと目を離すこと20分…。

戻ってみると水の中に金魚はいません。もう狩りは終わっていました。
そして4本の足を濡らして僕のことを威嚇していました。(その瞬間をパチリ!)

開園前の出来事で、今回は誰もその様子を見られませんでしたが、次回はみなさんにも見てもらいたいなぁと考えています。


(藤嶋)




水浴び場
(2008年7月24日)

 
 

梅雨も明け、毎日暑さが増してきました。
そこで、去年生まれの2頭の部屋に水浴びができるプールを設置しました。

設置してすぐは警戒して近づきもしませんでした。
が、しばらく経ってのぞいてみるとまわりに水しぶきの後があり、上のほうから濡れた姿でこちらを見ていました。
暑さには勝てなかったのか、しっかり使ってくれているようです。

その後、写真を撮ろうと待ちかまえていましたが、あまりの暑さにこちらが根負けしまい、水に入っている写真は収められませんでした。


アムールヤマネコは泳いで魚を獲ります。
泳ぐほどの広さはありませんが、魚を入れて彼らが獲っているところが見られるように、半透明のケースを使って工夫してあります。

生きた魚が手に入りしだい入れてみる予定なので、楽しみにお待ちください。


(藤嶋)




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