埼玉県こども動物自然公園

調べてみました

2025年4月19日

埼玉県こども動物自然公園では大学などの研究機関と協力して様々な調査を行っています。(これまでの共同研究について
調査内容は研究機関が希望するものだけではなく、飼育係が気になっていることや疑問に思っていることも調べていただきます。

お客様の声を聞いていると動物に対するたくさんの疑問が聞こえてきますが、飼育係も同じように疑問や不思議に思っていることがあります。今回は私が気になっていることについて、自分なりに調べた結果をご紹介します。

気になったこと

私が気になっていたことの1つ、それは有袋類の顔出し日や出袋日は気温に影響するのかについてです。
顔出し日…お母さんのお腹の袋(育児嚢)からこどもが顔を出した日
出袋日…育児嚢からこどもの全身が外に出た日

有袋類はお母さんのお腹の袋の中でこどもを育てます。こどもが成長していくと袋から顔を出したり、身体を出したり徐々に外の世界へ出ていきます。この袋の中にいる期間がそのときの気温によって長くなったり短くなったりするのではないかと考えました。夏の暑い時期では袋の中は暑くてこどもが早く出てくる、逆に寒い時期ではなかなか出てこないと予想しました。

調べたこと

そこで2018年から現在までの日誌やノートからオオカンガルー、ベネットアカクビワラビー、クオッカの3種類のカンガルー類の顔出し日、出袋日、完全出袋日を調べ、それぞれどれくらいの期間だったかをまとめました。その後月ごとの平均値を計算しました。
完全出袋日…育児嚢に全く戻らなくなった日

3種の大きさ比較
大きさ比較(左からオオカンガルー、ベネットアカクビワラビー、クオッカ)

分かったこと1

顔出し~出袋まで、顔出し~完全出袋まで、出袋~完全出袋までの3期間に分けた時のそれぞれの平均日数を出しました。顔出し~出袋まではオオカンガルー平均50.9日、ベネットアカクビワラビー平均60.9日、クオッカ平均18.4日でした。他の2種より身体の小さいクオッカは顔出し~出袋までかなり短いことが分かりました。3種の中ではベネットアカクビワラビーが最長であり、体が大きいほど出袋までの日数は長いと考えていましたが、あまり関係しないことが分かりました。しかし出袋~完全出袋まではオオカンガルー平均75.1日、ベネットアカクビワラビー平均56.6日、クオッカ平均35.2日でした。身体が大きい順にお母さんの袋に戻らなくてもよくなるほど成長するまで日数が必要であるためか、長くなることが分かりました。

3種の平均日数
3種の各期間の平均日数

野生で暮らしている環境や生態が異なるため体の大きさが各日数に関係しているか定かではありませんが、埼玉県こども動物自然公園のこの3種では以上のような結果となりました。もし顔出しを発見したらあと何日くらいで袋から出てくるぞと計算しながら観察してみるのも面白いかもしれません。

分かったこと2

顔出し~出袋まで、顔出し~完全出袋まで、出袋~完全出袋までの3期間に分けた時のそれぞれの平均日数を月ごとに出しました。
オオカンガルーについて見ていくと、各期間で月ごとに大きな差は見られませんでした。埼玉の暑い夏でもこどもはしっかりと成長してから袋から顔を出したり、身体が出てきたりすることが考えられました。

オオカンガルーの月ごとの各日数
オオカンガルーにおける月ごとの各平均日数

次にベネットアカクビワラビーについてです。ベネットアカクビワラビーは飼育管理上同じ時期にうまれるようにペアリングしているため偏りがあり、気温で比較することはできませんでした。

ベネットアカクビワラビーの月ごとの各日数
ベネットアカクビワラビーにおける月ごとの各平均日数

最後にクオッカについてです。他の2種は開園時間中外に放飼していますが、クオッカは展示時間が決まっており外にいる時間が限られているため差は出にくいと考えていました。しかし、顔出し~完全出袋までを見ると4月から8月にかけて日数が短く、10月には長くなることが分かりました。また出袋~完全出袋では5月から8月にかけて日数が短く、10月に長くなることが分かり、私の考えていた夏に短くなり、冬に長くなる予想に近い結果となりました。クオッカが初めてうまれた2020年から2025年までの動物園近くにある鳩山町の平均気温と比べると、気温が1番高くなる8月に平均日数が短くなり、その前後の少し気温が低いときは平均日数が少し長くなっていることが分かりました。

クオッカの月ごとの平均気温
クオッカにおける月ごとの各平均日数と平均気温

なぜクオッカだけ予想に近い結果となったか考えると、クオッカは身体が小さいため気温の影響を受けやすいのではないかと思いました。またクオッカが普段過ごしている室内はエアコンが効いるため、一定の温度が保たれているところから外に出ると気温の影響をより感じやすいのではないかと思いました。

今回の調査では体の小さいクオッカだけが気温によって袋に戻らなくなる期間に差があることが分かりました。クオッカは2020年に来園したため7頭のデータを使用しました。まだまだデータとして数が少なく、また冬場のデータもないため引き続き記録を行い、データを蓄積していきたいと思います。(今回出た結果は埼玉県こども動物自然公園にいるクオッカのものであり、クオッカ全体の結果とは異なります。)

K飼育係より

お問合せ先

〒355-0065 
東松山市岩殿554

こども動物自然公園管理事務所

電話:0493-35-1234

FAX:0493-35-0248

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