コスタリカのナマケモノ
2025年5月22日
こんにちは。普段は園内の動物についてお話をするブログ「飼育係より」ですが、今回はコスタリカに行ったお話をしたいと思います。
コスタリカは北アメリカと南アメリカをつなぐ中央アメリカに位置しています。国土の25パーセントは国立公園や自然保護区として管理されており、生物多様性の宝庫とも言われています。
およそ10日間の滞在中に出会ったさまざまな動植物のうち、今回は2種のナマケモノをご紹介したいと思います。
ピエレーラ・エコロジカルガーデンにて
1995年、オーナーのご夫婦が牧草地を植林することでさまざまな動物が生息するようになった熱帯雨林です。今回の旅行で最初に訪れた熱帯雨林がここだったのですが、さっそくニショクキムネオオハシ、ホエザル、シロヘラコウモリ、イチゴヤドクガエルなど驚くほど多くの動物を観察することができました。そしてナマケモノとのファーストエンカウントもここです。
トレッキングを始めてからほどなくして、小川にまたがる小さな橋から動く緑の塊が見えました。
地面を這うノドチャミユビナマケモノのオスでした

普段は樹上で過ごす動物なのですが、約1週間に1度の排泄の際は地面に降りてきます。
この個体もおそらく排泄直後だろうとのことで、さっそく貴重な瞬間に出会うことができました。
ナマケモノはフタユビナマケモノ科とミユビナマケモノ科に分かれています。
埼玉県こども動物自然公園にいるのはフタユビナマケモノ。そしてこちらはミユビナマケモノです。
体は少し小さく、目の周りにはラインがあり、名前の通り3本の長い指と爪が特徴的です。

体が緑色なのは藻類が被毛に繁茂しているためで、これがジャガーなどの外敵から身を守るカモフラージュになります。
下の写真の通り、周囲の樹木は樹皮が緑がかっていたり、藻類がびっしりと生えていました。
この時は運よくナマケモノが木に登っていく様子を一部始終見ることができたので一目瞭然でしたが、鬱蒼とした密林の中でじっとしていれば完全にカモフラージュされて個体を見つけることは相当難しかったと思います。

OTS ラ・セルバ・リサーチステーションにて
1600ヘクタールにもわたる原生林と、回復しつつある湿潤低地熱帯林が保全されている世界的にも有名な熱帯雨林研究機構を訪れました。長期にわたり動植物や気候変動に対する環境の動態など様々な研究が行われています。
複雑に密生する植物群に圧倒されながら歩いていると、ガイドの方が樹木を見るよう促しました。ナマケモノがいるとのことでしたが肉眼ではさっぱりわかりません。


ガイドの方が設置したフィールドスコープをのぞき込むとようやく居場所がわかりました。地表から8mくらいの枝の又で、ホフマンナマケモノが休んでいました!

ホフマンナマケモノはフタユビナマケモノ科の1種です。顔の皮膚は明るく、こちらも名前の通り2本の指と爪が特徴的です。先ほどのミユビナマケモノの被毛のような藻類は生えていませんでした。また、ミユビナマケモノは草食性ですが、ホフマンナマケモノは鳥の卵を食べることもあるとか。コスタリカでは2種のナマケモノの生息環境は重なっているのですが、うまく共存できているとのことです。
それにしてもみごとなカモフラージュぶり。これを即座に見つけられる研究者やガイドの皆さんには敬服するばかりです。
今回の旅行はいくつかの動物園のスタッフのメンバーでいったのですが、それぞれコスタリカの自然を肌身で感じ、多くの刺激を受けました。
野毛山動物園のブログではキタコアリクイについてレポートしていますので、こちらの視点もぜひご覧ください。
野生のコアリクイ観察レポート(野毛山動物園)
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/details/post-11709.php(外部リンク)
しげなり飼育係より
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